京都大学大学院農学研究科 21世紀COEプログラム 昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生pic
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ニュースレター

ニュースレター
NO.3 (Oct 17, 2005)
海外短期留学制度について

昆虫科学・フィールド研究の次世代を担う若手研究者に、早い時期に海外での研究活動を体験してもらう目的で、今年度から海外短期留学制度を設けました。5月2日募集開始、16日締め切りと云う僅か2週間の募集期間でしたが、4名の応募がありました。拠点リーダー藤崎憲治教授を中心とするワーキンググループによる審査の結果、森林生物学分野 井上みずき さん(D3)と生物調節化学分野 小倉岳彦 君(D1)が選ばれました。彼の地での彼らの活躍ぶりは下記の記事に譲りますが、二人とも大いに刺激を受けて帰ってきた様子が伺えます。今後も彼らに続き、出来る限り多くの優秀な学生に留学を経験して欲しいと思います。20日間程度という限られた日数の中で、世界の第一線で活躍する研究者にどれだけアピールできるか、また、海外の大学院生を相手にどれだけ議論できるか、学生たちの日頃の研鑽が問われるところではないかと思います。学生たちには、今後本制度を積極的に活用し、得られた経験を自分のものだけにするのではなく、研究室に持ち帰り、本COEでの雰囲気作りと活性化に大いに役立ててくれることを期待しています。
(化学生態学分野 森 直樹)

カナダへの短期留学を終えて

ポスター発表会場にて
ポスター発表会場にて
本COEの短期留学制度を利用し、カナダで開催された国際生態学会に参加し、またクィーンズ大学のChris Eckert教授の研究室を訪問してきました。国際生態学会では保全生態学に関わるInvasion speciesの研究発表が多く、これからの生態学に求められているトレンドを感じました。また、スミソニアン環境研究センターのDennis Whigham博士などに自分のポスターの内容を発表できたことには非常に感激しました。

クィーンズ大学研究林にて
クィーンズ大学研究林にて
クィーンズ大学においては、自分の研究発表をセミナーし、またChris Eckert教授に投稿前の論文を読んでいただきました。結果の解釈をめぐって議論をした結果、大幅に論文を改訂することにはなりましたが、とても有意義でした。加えて、彼らの調査のやり方を学ぶために院生とともに大学の研究林に出かけました。ミツバチやマルハナバチなど見慣れた昆虫の体色が異なること、ビーバーによる湿地林のギャップ創出、ササのない地域における針広混交林の林床など興味深いものでした。最後の数日間、Chris Eckert教授に彼の出身研究室であるSpencer Barrett教授の研究室を紹介していただき、予定外でしたがトロント大学を訪問してきました。トロント大学でも自分の研究を紹介できるチャンスがあり、集団遺伝学に造詣の深い学生も多かったために結果の解釈だけでなく、技術的な助言もいただきました。また訪花昆虫がいなければ結実できない異型花柱性植物を温室にて大規模に育てており、その中で異型花柱性を失い、自家受粉している遺伝子型のラメットを見せていただきました。

短期間の滞在でしたが、自分の研究に多くの人そして世界の第一線の研究者が興味を持ってくれたこと、同じ博士課程のカナダ人学生とのディスカッションなどを通じて、もっともっと研究をしたいという意欲がわきました。このようなチャンスを与えて頂いた本COEに非常に感謝しています。
(森林生物学分野 井上みずき)

ベルギーへの短期留学を終えて

2005 年の 6 月下旬から 1 ヶ月間、「21 世紀 COE プログラム 昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生」の短期留学制度により、ベルギーの Ghent 大学で研究を行う機会を得ました。

写真 1. 街の中心に立つ鐘楼
写真 1. 街の中心に立つ鐘楼
Ghent 大学のある Ghent 市は、ベルギー国内の北西部に位置する都市で、中世には毛織物業ギルドの街として栄え、現在もそのころの面影を残した趣のある街でした (写真 1)。ベルギーの主要言語は大雑把に言えば南北でフランス語とオランダ語 (Flemish) に二分され、北部に位置する Ghent 市では主にオランダ語が話されています。私はオランダ語が分からないので、当初はコミュニケーションに不安を持っていたのですが、街の人々の英語の理解度が高かったため、ほとんど不自由な思いをせずに済みました。ただ、地名等の名称は現地の言葉で呼ばれるのが普通で、英語名しか知らずに伝えるのに苦労することもありました。電車の駅では、行き先の地名等が電光掲示板上に 2 ヶ国語で交互に表示されるのを見て、それを奇妙に思ったのは文化の違いゆえかもしれません。ベルギーの文化として最も印象に残ったのは、色々な料理にフライドポテトが付いてくることでした。一緒に食事をしたベルギー人の友人が、「これはフレンチフライと呼ばれているけれど、本当はベルジャンフライだ!」と怒っていましたが、実際に世界で一番よくフライドポテトを食べるのはベルギー人なのだそうです。ベルギーの様々な文化を垣間見ることができました。

写真 2. コロラドハムシの脱皮
写真 2. コロラドハムシの脱皮
さて、今回の留学の目的は、鞘翅目 (テントウムシ等の仲間) の一種であり、重要な畑の害虫であるコロラドハムシに対する薬剤の活性試験を行うことでした。すなわち、今までに日本の鱗翅目昆虫で行われてきた活性試験の結果と比較し、薬剤の昆虫種間での選択性発現機構に関する知見を得ることが目標でした。コロラドハムシは日本への持ち込みが制限されていることから、これまで写真でしか見たことはありませんでしたが、今回の留学で、初めて生きているコロラドハムシに接することができました。初めて見る脱皮直後の幼虫の鮮やかなオレンジ色はとても印象的でした (写真 2)。留学先の研究室では、プレゼンテーションが母国語でない英語で行われていました。グローバルに研究を展開していくためには、私もより一層英語の練習が必要だと感じました。研究スタイルの違いも実感することができ、ベルギーでの 1 ヶ月は良い経験になりました。この経験を今後に活かし、グローバルで独創的な研究を行なっていければと考えています。

最後になりましたが、今回の留学にあたりお世話をしてくださった関係者の方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
(生物調節化学分野 小倉岳彦)

第1回COE昆虫科学講演会を終えて

鳥飼否宇氏の講演
鳥飼否宇氏の講演
本COEプログラムには、昆虫科学の専門分野をターゲットにしたセミナーやシンポジウムとは別に、文理融合を意図した講演会がある。今回の講演会はその第1回として7月2日に開催されたものである。講師には、横溝正史ミステリー大賞優秀賞の『中空』でデビューし、それ以降『昆虫探偵』など多くの探偵小説を世に出しているミステリー界の鬼才であり、かつ優れた自然観察者でもある鳥飼否宇氏をお招きした。講演のタイトルは「虫の見る目、虫を見る目」であった。一般の市民も含め、聴衆は70名を超え、大変盛況であった。

鳥飼氏は現在、奄美大島に在住であることもあって、「この亜熱帯の島がいかにすばらしい昆虫の宝庫であるか」ということから話が始まった。奄美にはシマアメンボやニホンミツバチなどの南限種、フチドリゲンゴロウなどの北限種が多数存在すること、また、ケブカコフキコガネ、アマミオヨギカタビロアメンボ、アマミマルバネクワガタ、スジブトヒラタクワガタ、フェリエベニボシカミキリ、マルダイコクコガネなどの固有種やアカボシゴマダラなどの遺存種も多いことが紹介された。その一方で、タイワンカブトムシやヤンバルトサカヤスデ、マングースなどの外来生物が増えており、奄美の生態系が撹乱されつつあることも力説された。また、公共事業が主たる"産業"であることによる乱開発の問題も指摘された。このあたりの話では奄美の自然をこよなく愛している鳥飼さんの気持ちがよく伝わってきた。

「虫の見る目」のくだりでは、昆虫がいかに適応力の高い生物であるかが軽妙にユーモアをもって語られた。騙し騙される擬態やカモフラージュの話の中では、目立つ赤色で一見警告色のようにも見えるフェリエベニボシカミキリの体色が照葉樹の暗い奄美の森では逆にカモフラージュになるのではないかという指摘は興味深かった。ドクチョウのカバマダラに擬態したツマグロヒョウモンの雌、なぜかクロウサギの糞しか食べないアマミヤマダラマグソコガネなども紹介された。

「虫を見る目」では、植物がなぜ花を咲かせるかといった問題や、鳥はなぜ渡りをするのかといった問題が、昆虫と関係付けられて謎解き風に語られた。また、人と昆虫との関係にも言及し、カブトムシやクワガタが"かっこいい"のは人間に取り入って分布拡大を図るためではないのかという"新説"を披露された。これは氏独特の冗談めいたアイロニーであるが、わが国でクワガタなどの外来昆虫が大量に輸入され、それがエスケープし、生態系を紊乱しつつある現状を見ると、この珍説に対して変にリアリティーを覚えたのは私だけであったのだろうか。いずれにしても、大変楽しく昆虫学を学べた有意義な講演会であった。
(昆虫生態学分野 藤崎憲治)

パラタクソノミスト講座

21世紀COEプログラム「昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生」の学際的連係の一環として、インドネシア・ジャワ島チビノンBIOLOGY-LIPIリサーチセンターにおいて、インドネシアの研究者・学生を対象に、パラタクソノミスト講座(IBOY training course)を開催し昆虫分類学における講義および実習を下記のとおり行いました.また,本COEから講師として参加した岸と古知は食糞性コガネムシ類について科から属までの同定に関する講義および食糞性コガネムシ類についてのBiology of Dung Beetl−Behavioural and Community Ecology−"という演題で講演を行いました。そのなかで、岸は行動生態学の基礎と最近の自らの研究内容について,古知は群集生態学における糞と食糞性コガネムシ類との関係について論じました。
(昆虫生態学分野:岸茂樹 古知新)

期間 2005年1月24日から2月2日
場所 インドネシア・ジャワ島チビノンBIOLOGY−LIPIリサーチセンター
実習の内容 1.甲虫類の同定方法
2.現地の標本を用いたコガネムシ上科の属までの同定
3.食糞性コガネムシ類のデータベース化
4.日本から参加した講師による講義
5.IBOYのサンプル方法の講義およびGHNP (Gunung Halimun National Park) における実習
講師 北大COE関係者4名(科学博物館・宮城教育大を含む)、
京大COE関係者2名、金沢大COE関係者1名、その他(京大)1名
IBOY training courseに参加して

このたび、京都大学21世紀COEプログラム「昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生」の支援を受け、インドネシア・ボゴールおよびチビノンで行われたDIWPA/IBOY主催のInternational Field Biology Course in Indonesiaに講師補助として参加した。今回のコースは甲虫のパラタクソノミストを養成することを主な目的としており、私と岸茂樹は研究対象である糞虫の分類実習を行うこと、および糞虫の生態に関する講義を行うことであった。我々は糞虫を研究対象とはしているが、生態学者であり、分類に関しては素人に毛が生えた程度の知識しか持ち合わせていない。インドネシア渡航前には東南アジアの糞虫に詳しい滋賀県立大学の近雅博博士を訪ね、東南アジア産の糞虫標本を見せていただくとともに、文献をいただき、主要なグループの分類のキーなどを教えていただいた。また、渡航後、我々担当する分類の実習までしばらく日があったので、連日チビノンのインドネシア科学院の標本庫に籠もり、実際に標本と近博士からいただいた文献を突き合わせ、インドネシア産糞虫の特徴を把握することに努めた。そのような準備の甲斐あってか、乏しい分類の知識と拙い英語ではあったが、トレーニングコースの受講者に満足していただける講義ができたようである。北海道大学総合博物館の大原昌宏博士を初めとする、分類学を専門とする講師の方々の講義を聞けたことや彼らと交流できたことも今回の大きな収穫の一つであった。さらに、中部スラウェシのUniversity of Tadulakoで糞虫を研究しているShahabuddin氏と知り合えたことも大きな収穫であった。分類の実習をしていて気になったのが、機材の乏しさである。昆虫、特に微少な種を正確に同定するためには実体顕微鏡が不可欠である。しかしながら、実習で用いられた顕微鏡は大原博士らが北大から持ってこられた4台を除けば、非常に状態の悪い物であり、状態のよい4台を使っていた受講者以外は、分類のキーとなる重要な、しかし微細な形質が十分に見られないケースが散見された。今後知識の伝授と同時に、機材の支援も必要であるように思われた。

生物多様性の重要性が叫ばれている現在、多様性の宝庫である熱帯の国々において、研究者やそれをサポートできる知識を持つ人々を育てることは急務である。今回、トレーニングコースに参加し、その一助となったことは私にとって大変な喜びである。

トレーニングコースに参加する機会を与えてくださった金沢大学の中村浩二教授、参加を支援してくださったCOEプログラム拠点リーダーの藤崎憲治教授、インドネシア渡航前に東南アジアの糞虫の分類についてご教授くださった滋賀県立大学の近雅博博士にこの場を借りて御礼申し上げる。
(昆虫生態学分野  古知 新)

このIBOY training courseへの参加はほとんど偶然の出来事でした。コガネムシ科を専門とする著名な分類学者の方々が参加できなかったために専門外の若輩者の私に白羽の矢が立ったというのがいきさつです。日本で行動生態学を研究している私にとってはインドネシアの食糞性コガネムシ類(以下フン虫)の分類はほぼ無知に近い状態だったというのが正直なところです。そのため話が決まってから記載論文をかき集め、慣れない分類の勉強をしました。しかし実際に標本を見なければなかなか分からないことも多く滋賀県立大の近先生に教えを請うたりもしました。もともと分類の専門家の方がするはずの仕事ですから当然です。それに現地で講義と講演を受け持つという大役を引き受けてしまったためその準備もしなければなりませんでしたし出発の前日深夜まで講演内容を作成していました。インドネシアに飛んだ後もフン虫の同定のためにLIPIの標本室に閉じこもって論文を片手に一日中標本とにらめっこでした。実際講義を受け持ったのは実習後半の1日だけでしたが、当然ながら英語で説明しなければならず四苦八苦したのはいうまでもありません。専門家でも難しい内容を分類初心者の私がインドネシアの大学生や若手研究者を相手に拙い英会話で説明するのですから。もちろん自分にできる精一杯のことはしたつもりです。講師としていくのですから同行した日本の研究者の方々に迷惑のかからぬようにしようと思いましたし、なによりもこの実習で何かを得ようと期待して参加しているインドネシアの方を失望させることはできないと思いました。講義では北海道大学の諸先生方に助けていただきながらなんとか属まで分類することができました。

朝9時から午後6時まで講義、さらに夕食後は講師による講演が連日催されたことからも分かるとおり今回の実習は講師にとっても受講者にとってもかなりハードなものだったと思います。それだけに非常に内容の濃い実習だったといえます。英語による講義や講演など私にとって初めてのことばかりで戸惑った部分もありましたが、そのことこそがこれからの私の将来にとって良い経験になったと思います。さらにいえば同行した日本の研究者の方々から熱帯における研究についてホットな話題を直接お聞きできたことや分類学という最も基礎的な学問について学べたことも大きな収穫でした。また東南アジアの中でも異色のイスラム圏であるインドネシアという国の文化に触れることもできました。このようなことを総じて考えてみると私にとって今回得られた最大の収穫は、外国で、特に生態学の将来が期待されている熱帯で研究に従事することが身近に感じられるようになったことだと思います。日本の中だけではなく広く世界に目を向けることは研究を続けていく上では重要なことです。今回IBOY training courseに講師として参加することができ多くのことを学ばせていただきました。このような機会を与えてくださったことに深く感謝しています。
(昆虫生態学分野  岸茂樹)

講演会およびセミナー開催内容
第10回 COE昆虫科学セミナー 「Biological Control: Do we need one or many species of natural enemies?」
Dr. William W. Murdoch (Univ. of California, Santa Barbara)(2005年9月22日)
第11回 COE昆虫科学セミナー 「Microbial control of arthropod pests and disease vectors in Africa」
Dr. Nguya K. Maniania (The International Centre of Insect Physiology and Ecology (ICIPE), Kenya) (2005年9月26日)
第12回COE昆虫科学セミナー 「Biological attachment systems as a possible source for biomimetics: What can we learn from evolution?」
Dr. Stanislav Gorb (Evolutionary Biomaterials Group, Max-Planck-Institut fuer Metallforschung, Stuttgart, Germany) (2005年10月6日)
お知らせ
第2回国際シンポジウム「昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生」を10月31日(月)から11月2日(水)まで3日間にわたって芝蘭会館にて開催予定.
今回のシンポジウムでは,招待講演とポスター発表だけでなく,学生の英語による口頭発表を企画しています.

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発行元:昆虫COE事務局
問い合わせ先:京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻化学生態学分野(TEL 075-753-6307)

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