京都大学大学院農学研究科 21世紀COEプログラム 昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生

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プログラムの概要

拠点形成の背景・目的

地球誕生から46億年、我々人類はたかだか600万年ほどであるのに対し、昆虫は4億年という長い年月を生き抜いてきました。昆虫類は世界で約100万種が知られ、実際には500万種はいるとも言われています。この推定が正しければ、昆虫類は全動物の5分の4を占めることになります。地球が"虫の惑星"と呼ばれる所以です。それだけに昆虫は自然生態系の中で他の生物たちと密接な関係を取り結びつつ、きわめて重要な役割を果たしてきました。すなわち、彼らは4億年という気の遠くなるような時間をかけた進化的産物であり、それ自体が生存するための工夫の結晶であり、"智"の宝庫であると言えます。

本拠点では、人類よりはるかに単純な神経系の持ち主である昆虫類が何故かくも繁栄できているのか、その論理と方法を探り、そこから学ぶ科学を創生します。このような科学を私たちはエントモミメティク科学(Entomomimetic Sciencesあるいは昆虫模倣科学)と名付けました。そこから導かれる新しい生命観、世界観は、人間中心の世界観とは鋭く対峙し、人類が地球上で今後生き延びていく上で不可欠な"複眼的視点"を提供するものと期待されます。昆虫類の生きる知恵は、人類にとって有用な資源です。昆虫類の研究は新たな産業の創生をもたらし、人類の豊かな生活に貢献するでしょう。

その一方で、昆虫の一部は「害虫」として我々の農作物に損害を与えます。この損失を防ぐため、殺虫剤等の農薬が使用されるようになりました。しかし、農薬の普及に伴って天敵相の変化による害虫の誘導多発生や、殺虫剤抵抗性の発達という新たな問題も生じ、また農薬が環境に与える負荷も懸念されます。そのため、昆虫の生理や生態の深い理解に基づいた、より効果的で環境にやさしい洗練された作物保護技術の開発が求められています。昆虫科学は、 21世紀の重要課題である食料問題とも大きく関わっているのです。

さらに昆虫は変温動物であり、地球温暖化の敏感なセンサーでもあります。したがって、彼らの発生動態の追跡により、温暖化による生態系の未来を予測することができます。

このように、昆虫科学を通して新たな世界が広がり、多くの出口を見出すことができます。これほど研究材料としても教材としても、多くの波及効果を持つ素晴らしい生物グループは他にありません。ここに、分子生物学から生態学まで、多様に分断化された学問分野を統合・融合し、総合科学としての新たな昆虫科学を打ち立てるための研究・教育拠点を形成する最大の理由があります。



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